不動産マネジメントはリスクに対する正しい認識から始まる
○量と質の両面からとらえるリスク
─ご自分でも賃貸マンションをお持ちの徳武社長さんは、不動産マネジメントのプロとしてたくさんのプロジェクトを手がけられていらっしゃいますが、そのなかで、リスクマネジメントをどのように織り込んでおられるのでしょう
■これまで、資産活用のうち不動産に関するものについて、社会的に正しい認識が浸透していたとは言えません。土地に関して悩みを持っている方が建築業者に依頼をして図面をつくり、それで簡単な収支を計算して建ててしまう、そんな例ばかりを見てきたのです。よく社内で言うのですが、「目先の収支に終始した」計画ですね。(笑)
そこに私どものような、オーナーへの全体的な不動産資産活用提案ができる者がぽつりぽつりと現れ、不動産投資に対するリスクを明確にし始めた。
わたくしどももそうだったのですが、不動産に対するリスクマネジメントを進める上で、何年にもわたって心を砕いてきたのはリスクの定量化でした。すなわち、計画を進め、事業を推進する上で評価可能なリスクについて、数値として表し、顧客の意志決定にぶれがないようにするわけですね。
ところが2001年の同時多発テロを見て、わたくしどもも根本的に考え直す機会を与えられました。
─ほう、あのアメリカの出来事が、御社で手がける日本の不動産マネジメントにも影響しましたか
■わたくしどもは大きな衝撃を受けました。その結果、いままでの評価可能なリスク、定量的なリスクのみならず、評価不可能なリスク、すなわち定性的なリスクも組み込んだ、いままでより次元の高いリスクマネジメントを目指すべきだとの目標ができました。それが現在理想的なカタチになっているとは断言できませんが、少なくともそういう認識がある分だけ、われわれには一日の長がある、と言えます。
○不動産のリスクマネジメントとは
─その状況の中で、株式会社ブロスではどのようなリスクマネジメントの変化があったのでしょうか
■もともと不動産投資というのは資産を持った方がご自身の責任で、ご自身の判断で、事業を決定してゆく性質のものです。近年脚光を浴びている不動産投資信託(REIT)のように、これまでとは違ったベクトルを持つ動きもありますが、大多数はこれからもそういった性質の事業であり続けると考えられます。現在のREITの市場規模が5千億円程度ですから、日本の不動産の資産総額から見れば微々たるものですよね。
その状態では他の事業に比べれば、説明責任がないんです。企業であればたくさんのステークホルダー(利害関係者)がいる。それに比べ不動産投資事業では、意志決定が少しぐらい不透明でも、それはオーナーの責任、と皆が考えてきました。
ところが現在のように不動産投資に関する不確定要素が多い時代には、そんなことを言ってはいられません。一つ一つの条件を積み上げるようにして意志決定をしてゆく必要があるのです。
意志決定とリスクは表裏一体の関係があります。取るべき戦略が多岐にわたるほど、アカウンタビリティ(説明責任)は上がってゆくものだと考えています。トランスペアレンシー(透明性)とアカウンタビリティの違いはそこにあるとも言えます。
2へつづく
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