色彩計画、環境・景観・建築色彩
20世紀初頭のアメリカで起こった、興味深いできごとを紹介いたしましょう。

自動車メーカーのフォードは、ゼネラル・モータース(以下GMと略記)を大きく引き離し、年産300万台の牙城を誇っていました。当時フォードの車種はT型車両たったひとつ。フォード・システムと呼ばれる、その時代最高の量産体制で、独走を続けていました。
対するGMは、設備投資によって生産体制では追い付くことができても、それに見合う台数を販売する自信はありません。あるGMの社員が、車に色を付けることを思いつきました。フォードのT型は黒い色のみだったのです。黒い車だけの市場へ、色とりどりの車が現れました。GMのカラフルな車は飛ぶように売れ、それに反比例してフォードの車は販売不振に陥ります。

この逆転劇は、メーカーに大きな教訓を残しました。

ものは、ただ作るだけではだめで、市場のニーズを把握し、ニーズに添った商品化が大切であること。販売するものは、製品であると同時に商品であること。色彩という機能そのものとは全く別の要素が、工業製品においてさえ強力な販売力になること。

人々は、商品をイメージで買っているのです。このようなマーケティングの概念の萌芽が、色彩の分野から始まった事実を、私達は非常に示唆的であると考えます。

クロマティックス(chromatics)=色彩学
ブロス・クロマは、色彩学の略語を冠してはいますが、学問的な研究が主業務ではありません。色彩という切り口を通して、施設や商品の持つイメージづくりに寄与しています。

CIに見られるような、共通言語としての色彩。
マーケティングの武器としての色彩。
真に人間中心の環境を実現するための色彩。

色彩の持つ、人の認識へ及ぼす強い力を、私達は見つめ続けてゆきます。