○ 土地資産は社会的な財産 まだまだ意識改革が必要

─三つめの社会的な道筋というのは、具体的にはどういうことでしょうか?

徳武■たとえば、銀行の融資額の算定は、まだまだ担保評価主体だと思います。
 かなり詳細な計画を立案し、家賃相場が3割減になることや、金利が倍になることを織り込んで大丈夫な収支計画であっても、土地の評価額を主体とした算定方法からは抜け出てもらえません。金融機関は、バブル崩壊とそれに伴う不良債権問題から、何も学んでいないとも言えます。
 建築基準法や関連法規が緩和されて、共用部分や地下住戸など、容積率以上の床面積が建築可能になった現在でも、いまだに土地評価額一辺倒で、本当に事業に対して融資するという視点に立っていません。
 融資の例をあげましたが、あらゆる面で、この狭い国土を有効に利用するための、社会的な認識レベルが低いように思います。
 根本的なことを言わせてもらえるならば、駅の近くの良い場所に、利用されていなかったり、低い利用率の場所がいくら目についても、「ああ、バブルの後遺症だな」と、それを誰も何とも思わなくなっているのですから。

○ CSや事業戦略の導入で、新たな資産価値の創造を

─オーナーの皆さんにとって、 ご指摘の点について、対策はあるのでしょうか。

徳武■もちろんあると思います。
 第一に、賃貸経営でも、顧客満足(CS)の考え方を導入すべきです。入居者はもちろんのこと、近隣住民や二十年後の入居者にとっても、良い建物であり続けるにはどうしたらいいか。その考え方があって初めて、戦略的な対策が立てられるのだと思います。
 第二に、その土地周辺の市場と、将来動向を正確に把握した上で、事業計画を立てることです。そのためには、良いプロフェッショナルを捜す必要があります。
 事業の際には建物以外の余計なモノには支出をしたくないのですが、コンサルティングという無形のものには、きちんと投資することが、必要なのではないでしょうか。
 三点目は、かけがえのない土地資産には、かけがえのない建物を計画すること。隣と同じ建物では、入居者に選ばれない時代なのです。

 最近流行のデザイナーズマンションを真似て、安易に打放しコンクリートに飛びつくべきではありませんが、戦略としてのデザインを考慮する必要はあります。
 デザインや機能・設備などで、特色を持った計画を志しましょう。それが、土地という社会的な資産を所有している者の義務だ、と思います。

 強いコンセプトと明るいビジョンこそが、街並みを美しくし、環境をすばらしいものにするのですから。



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ビレットブロスのコンセプト3 雑誌掲載記事より転載