いま家族は大きな転換期に入っています。これまでのように「結婚し子供をつくりマイホームを建てる」ことだけで家族をうまく維持していくのはむずかしい状況です。そのわけは家族をとりまいているさまざまな仕組みが崩れていることにあります。

中略

けれどもっとも問題だとおもえるのは「郊外の住宅地に建つマイホーム」そのものに、人々が夢を無条件に描けなくなっていることだと思います。

夫婦に二人の子供、マイカーが一台に犬が一匹、日曜日には芝の庭でバーベキュー。こうした家庭生活がかならずしも家族の幸福を約束するものではないということに人々は気づきはじめました。

NHK人間講座藤原智美「住まいから家族を見る」より


絵に描いたようなマイホーム(建物だけでなく家族も含めて)が人生の目標である時代の終焉は、わたくしたちの住いづくりにどのような影響を与えるのでしょう。

たぶん造り手の側には、問題解決能力や提案力を10年前よりももっと厳しく要求されるのだろうと思います。

最近とみに感じるのは、家族のあり方自体が根本的に問い直される時代だと言うことです。

引きこもりの若者や、家庭内別居状態の老年夫婦がお客様になる例が見られるようになったのも、ここ数年のこと。住いづくり以前の、「人生相談」を必要とする家庭が増えているのは事実なのでしょう。むろんわたくしに人生相談が出来るわけではありませんから、どこまで踏み込んで家族関係に分け入ってゆくべきなのか、打ち合せのたびに悩んでいます。

今回で、「住まいから家族を見る」を肴にお話しするのは終わりになりますが、住いづくりの上で家族の問題は避けて通ることのできない関門です。その部分に今後ますます問題が増えてゆくとすれば、冒頭の「開講の言葉」にあるように、「人間関係は住まいという空間によって大きく影響されます。反対にその家族状況が住まいという空間を通して現れてくることもあります」と考え、設計を通じたお手伝いをしてゆくのが住いづくりのプロとしての使命なのでしょう。

「家族は、住宅という空間を通して、初めて家族となります」
この言葉を、ひいては建築の持つ力を信じてゆきたいと思います。


すまいづくり雑感
□ 「住まいから家族をみる」より 8
まえへ≪     ≫つづく