現代の建築は、どの部分も美しく、明るいことを目標にしてきましたが、それによって生活は明るくなったのでしょうか。
確かに、暗い洞窟から発した家は、文明の発展とともに明るさを求める方へ進んできました。それ自体は決して悪いことではないでしょう。
しかし、家の中から闇を追放することで、人生の闇を減らすことができたとはとても思えません。
たとえば、昔の暗い便所のイメージを振り払うために、明るいトイレを目指すのは歴史的には良いことでしょうが、首都圏の子供はくみ取り式のトイレを知らない子がほとんどでしょう。
暗い怖いトイレをいやがるのはその記憶の反動ばかりではないにしろ、もうそろそろそうした過去の呪縛から離れて、本当に心地よい空間を目指す時期にきています。
トイレで本を読むのが好きなら、便器の前に机を設け、そこのスタンドの灯りだけの空間だってありです。
沈思黙考に浸りたいなら床に置いた裸電球もいいでしょう。
暗いトイレから出たら、皆がいる明るい居間、というのもメリハリがあって素敵です。