□社長のこと 29    M.S.

○月×日

社長の持ち物 その1



社長はバッグが好きだ。机の下にざっと1ダースくらい並んでいる。
革のものが半分くらいと、あとはパソコンバッグ。すべてが黒。

外出時いつも持っているバッグはルイ・ヴィトンの黒いエピのブリーフケース。
ほかにエピぞろえでいくつか持っているが、それはまた別の話。

「ホントは女物なのかも」と言うが、値段を調べてビックリ。

このブリーフケース、なんと20年近く使っているとのこと。
(これまでの表記は社長の記憶違いでした。奥様の記録によると、ブロス創業とほぼ同時期とのこと)
信じられないくらい綺麗。傷は少しあるし、取手の根元には割れが入っているが、遠目ではまったく判らない。

革製品は手入れを怠らなければかなり持つそうだ。

社長のバッグの手入れは面白い。

最初見たときは大丈夫なのかと思った。こんな高額なバッグに、そんなことをして。

表面は黒なので、革の汚れ落とし材を使ってから、靴墨の黒いのを塗ってしまい、しばらく放置してから柔らかい布でふき取る。これは2〜3ヶ月に一回見るが、もっと頻度はあるかもしれない。

小口がよれてくると、曲がった部分をダブルクリップで補正しておいて、痛んだ箇所に瞬間接着剤を塗って、2,3日置いておく。完全に乾いたらクリップを外し、紙やすりで角を取って表面を荒らしてから、マジックの黒を塗ってすぐに布でふき取りツヤを消す。その上に靴墨を塗って仕上げる。これは1年に一回くらいか。

文章にすると乱暴なようだが、それを細心の注意を払って行う。
そうやって長年、綺麗に使い続けているのだから、それで手入れとして妥当なのだろう。
(社長注・これはあくまで手入れの一例であり、この方法を薦めるわけではありません。また、この方法はメーカーの修理を不可能にします。おやりになるならあくまでも自己責任でお願いします。)

荷物が多いときや少ないときは他のバッグも持って出掛けるが、圧倒的にこのエピのバッグの使用頻度が高い。

理由を聞くと、最も使いやすいのだそうだ。

革のなめしが強いので、傷が付きにくい。
雨に当たっても帰社してから拭き取れば、なんともない。
フタの部分が大きく本体にかぶっているから、雨に当てても中は濡れない。
マチが大きく、本を買ったり客先で資料をたくさんもらっても、かなりの分量が入る。
内部が2つに分かれていて、ノートパソコンとファイルの2冊くらいは普通に入れられる。
2つある内部小ポケットの収納量がすばらしい。
外部のポケットにはA3のファイルが折らずに縦に入れられる。

バッグを語らせると話が長い。好きなんだろうなあ、それだけ。

そうそう、もうひとつ社長の驚くべき革製品があった。




       
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