□社長のこと 35 M.S.
○月×日
マンションの設計
マンションデベロッパーさんからの仕事が続く。
ブロスカレンダーでは、毎年、年頭から6月くらいまでマンションが多く、年後半は店舗が多くなる。お盆明けから年度末まで都市計画系の仕事が進み、2、3月は仕上げの時期なので大変なことになる。戸建系はあまり高低なし。
まあどの仕事も、一年中やっている感じはあるのだが。
社長を見ていてすごいのは、マンションと戸建住宅を交互に、あるいは同時にプランできてしまうことだ。
一般の方には判りにくいかも知れないが、マンションの間取りと戸建住宅のそれはまったく別のものだ。
ブロスに入ってすごく驚いたのは、その違いだ。門外漢だった私にとって、衝撃だった。
1)プラン時点では誰が住むのかがわからないと言う制度上の違い
2)マンションプランは大きな建物の一部分、構成要素であり、戸建はそのものがひとつの建物になる
3)マンションプランは売るため、買ってもらうための演出が先に立つ
お茶の時間に、社長に違いを聞いたときの答えが上の3つだった。
そう、この3つに集約される違いは根本的なもの。
「戸建の注文住宅の設計は、お客様にどこまで感情移入できるかだ」
という社長の言葉がある。
「自分の建築的な経験やスキルを、そっくりそのままそのお客様が持っていたら、どんな家を建てるのか、そう思って設計する」
とも。
「戸建では、窓の位置、外観がひとつのメッセージになる」
「マンションプランは、デベさんが売る不動産物件であり、戸建注文住宅はそうではない」
「マンションプランは、法律がつくる」という名言も、社長から聞いた。
マンションプランの自由度は、意外と低いのかもしれないですねと言ったら、社長は言った。
「画期的なマンションプランがあるのではないかと、いつも考えている。これまで誰も気づかなかった、でも誰もが住みやすく、法規上の自由度があり、長いライフスタイルの変化にも耐える、そんなプランが」
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